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2025.09.25
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「保育現場におけるRSウイルス感染症の疾病負荷軽減のためのRSウイルス母子免疫ワクチンおよび抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤の早期定期接種導入に関する要望書」の提出について

令和7(2025)年9月12日付 日本小児保健協会より厚生労働省へ、「保育現場におけるRSウイルス感染症の疾病負荷軽減のためのRSウイルス母子免疫ワクチンおよび抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤の早期定期接種導入に関する要望書」を提出いたしました。

 

「保育現場におけるRSウイルス感染症の疾病負荷軽減のためのRSウイルス母子免疫ワクチンおよび抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤の早期定期接種導入に関する要望書」.pdf

 

令和7年9月12日

 

厚生労働省 健康・生活衛生局
感染症対策部長 鷺見 学 殿

 

日本小児保健協会 会長 山縣 然太朗

 

保育現場におけるRSウイルス感染症の疾病負荷軽減のためのRSウイルス母子免疫ワクチンおよび抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤の早期定期接種導入に関する要望書

 

平素より、国民の健康と生活衛生の向上にご尽力いただき、厚く御礼申し上げます。
日本小児保健協会では、保育現場におけるRSウイルス感染症の深刻な疾病負荷を踏まえ、組換えRSウイルスワクチン(販売名:アブリスボ筋注用、以下「RSウイルス母子免疫ワクチン」)および抗RSウイルスモノクローナル抗体製剤(ニルセビマブ;販売名:ベイフォータス)の定期接種化を早期にご検討いただきたく、ここに要望いたします。
小児におけるRSウイルス感染症の負担は極めて大きく、複数の研究においてもその深刻さが報告されております(文献1〜6)。このような背景を受け、当協会も所属する、予防接種推進専門協議会から、2024年11月13日付で「組換えRSウイルスワクチンの早期定期接種化に関する要望書」ならびに、2025年4月8日付で「RSウイルス母子免疫ワクチンの早期定期接種化および抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤を広く提供するための体制整備に関する要望書」を提出させていただきました(文献7〜8)。また、日本小児科学会からは、2024年11月21日付で「すべての新生児・乳児に対して抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤を広く提供するための体制整備に関する要望書」が提出されています(文献9)。
さらに、2024年11月21日に開催された「第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」では、RSウイルス母子免疫ワクチンおよび抗RSウイルスモノクローナル抗体製剤に関するファクトシートを作成し、定期接種導入に向けた評価を進めていくことが決定されております(文献10)。
当協会では、RSウイルス感染症流行時における保育現場の負担に関する意見を収集してまいりました。主な内容は以下のとおりです。
•  低年齢児が罹患した際の重症化に対する看護業務の負担
•  感染者が発生した際の感染対策の実施の難しさ
•  体調不良児への保護者への急なお迎え依頼や自宅療養要請による、保育施設職員の心理的な負担
RSウイルス感染症は、保育施設において一人の罹患者が出ると、同一施設内でのクラスター感染が頻繁に確認されており、半月近くにわたって感染が繰り返されることが報告されております(文献11)。特に低年齢児集団ではその影響が深刻であり、保護者への急なお迎えの依頼や看護のための長期欠勤を余儀なくされるなど、家庭や社会への影響も大きくなっております。実際に、RSウイルスに罹患した子どもの保育施設欠席率は83%、保護者の就労中断率は59%に達するとの報告もございます(文献12)。
以上のような状況を踏まえ、今後のRSウイルス感染症に対する予防戦略として、以下の点について改めて要望いたします。
1. RSウイルス母子免疫ワクチンにつきましては、ファクトシートが作成され次第、速やかに定期接種導入の評価を行い、遅滞なく定期接種として導入いただけますようお願いいたします。
2. 抗RSウイルスモノクローナル抗体製剤につきましては、現在見直しが進められている予防接種の基本的な計画(文献13)にも記載のとおり、医学の進歩に即した制度整備を進めていただき、既存の定期接種ワクチンと同様に広く接種が可能となる体制の整備を早急に推進していただきますようお願いいたします。
保育現場および小児の健康を守るためにも、何卒ご配慮とご対応のほどよろしくお願い申し上げます。

 

参考文献
1. Hak SF, et al. Burden of RSV infections among young children in primary care: a prospective cohort study in five European countries (2021–23). Lancet Respiratory Medicine. 2025;S2213-2600(24)00367-9.
2. Tanaka M, et al. Impact of child respiratory syncytial virus-confirmed infections on caregivers in Japan: A web based survey. Journal of Clinical Medicine. 2024;13(18):5355.
3. Kobayashi Y, et al. Epidemiology of respiratory syncytial virus in Japan: A nationwide claims database analysis. Pediatrics International. 2022;64:e14957.
4. Yanagisawa T, et al. Survey of hospitalization for respiratory syncytial virus in Nagano, Japan. Pediatrics International. 2018;60:835–838.
5. Nagasawa K, et al. Disease burden of respiratory syncytial virus infection in the pediatric population in Japan. Journal of Infection and Chemotherapy. 2022;28(2):146–157.
6. Okubo Y, et al. Clinical practice patterns and risk factors for severe conditions in pediatric hospitalizations with respiratory syncytial virus in Japan: A nationwide analyses (2018–2022). Pediatric Infectious Disease Journal. 2024;43(3):187–193.
7. 予防接種推進専門協議会.組換えRSウイルスワクチンの早期定期接種化に関する要望書.https://vaccine-kyogikai.umin.jp/pdf/20241115_Request_for_early-routine-vaccination_with_recombinant-RS-virus-vaccine.pdf(参照2025年7月1日).
8. 予防接種推進専門協議会.RSウイルス母子免疫ワクチンの早期定期接種化ならびに抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤を広く提供するための体制整備に関する要望書.https://vaccine-kyogikai.umin.jp/pdf/20250409_Request_for_early-routine-RS-virus-maternal-immunization_a-system-to-widely-provide-human-monoclonal-antibody-products-against_RS-virus.pdf(参照2025年7月1日).
9. 日本小児科学会.すべての新生児・乳児に対しても抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤を広く提供するための体制整備に関する要望書.https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250404yobosho.pdf(参照2025年7月1日).
10. 厚生労働省.第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 資料1.https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001336257.pdf(参照2025年7月1日).
11. Chu HY, et al. Molecular epidemiology of respiratory syncytial virus transmission in childcare. Journal of Clinical Virology. 2013;57(4):343–350.
12. Rybak A, et al. Assessing the burden of respiratory syncytial virus-related bronchiolitis in primary care and at 15-day and 6-month follow-up before prophylaxis in France: A test-negative study. Pediatric Infectious Disease Journal. 2024;43(7):657–662.
13. 厚生労働省.第60回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料2「予防接種法施行令の一部を改正する政令案要綱」及び「予防接種に関する基本的な計画」について(諮問).https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001388067.pdf(参照2025年7月1日).